Palme d'Or

2018 Jun　是枝監督作品映画「万引き家族」

下記、多少のネタバレご注意を・・・

カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したという。
是枝裕和監督なら有りえるだろうと感じていた。
原作が無いのでまさに是枝ワールドを満喫できるであろう作品。
ミーハー気分でkumiちょと観賞して驚愕の印象を叩きつけられた。

今にも潰れそうなあばら家でストーリーは展開してゆく。
家族間の会話やテンポは重たく無くむしろ軽快ですらある。
リリーフランキーのだらしない男の感じがリアリティーに溢れすぎて、
それが怖いくらいに安定していて実写ムービーのようであった（笑

人生負け組のクズ野郎として万引きとババアの年金で生きる男。
だけどニセモノでもいいから父親になりたいと願う側面が憎めない。
嫁役である安藤サクラとの濡れ場ですら笑えた♬
その最中に子供達が帰宅するという家族あるあるが笑いを誘う。


突出した感性と感動をもたらしたのが安藤サクラの演技であった。
警察署の取調室で刑事のとある質問に「泣く」シーンがあるのだが・・・
完璧な母親として溢れる涙を拭うシーンは他に類を見ない演技力であった。
真正面のアングルであのカメラ目線の演技で僕は涙腺崩壊寸前であった。
何度もなんども涙を拭い最後に静かに放った一言は哲学的ですらあった。
このワンカットで主演女優賞確定と言っても過言ではないシーンである。
ある意味、涙を自在に操れる女優という生き物には恐怖すら感じる（笑

解せないシーンもある。松岡茉優が皆んなと過ごしたあばら家に戻ったシーン。
何を思い戻ったのだろうか？そしてラストに繋がる意味があったのだろうか？
でも風俗で働く松岡茉優の太ももに残った客の涙は凄く印象的であった・・・
閉鎖的で後ろ向きな境遇で生活する者同士の近しい匂いを感じ取ったのだろう。

りん（ゆり）ちゃんの本当の家族はあばら家で暮らす偽物の家族だったと感じる。
ラストの廊下で独りで遊ぶシーンは訴えかけるものが多すぎて嗚咽しそうになった。
お腹を痛めて産んだ我が子をいとも容易く虐待する親の心境は絶対に理解できない。
その子役であるりんちゃんは、割烹いまだの享さんの親戚だと聞いてビックリしたよ（笑
役者名は佐々木みゆちゃんです。

リリーフランキーと城 桧吏が雪だるまを作るシーンは絶妙な演出であった。
父と子が無邪気に遊ぶ雰囲気が悲しくなるくらい伝わってしまう・・・
城 桧吏がバスに乗る前にリリーフランキーに喋った一言。
それはウソなんだけど、力強く自分から緞帳を下ろし前を向く姿勢を現したのだと思う。

演技力で言えば樹木希林の右に出る者はいないだろう・・・
この万引き家族の事実上のトップと言ってもよい存在である。
誰かが捨てたのを拾い、捨てられた者が寄り集まった家。
海水浴での樹木希林と安藤サクラの会話も絶妙なシーンであった。
血の繋がりが無いからこその絆って嘘じゃ無いんだよね。

血の繋がりだけが家族じゃないんだ。見返りを期待しない愛はすでに家族でしょ！
他人同士の夫婦が最たるもので、歪みが生じれば露と消えるのも家族である。
余談なのだがこの映画を観た日の夕食に僕はトウモロコシと冷ソーメンを希望した。
ソッコーでkumiちょにツッコまれた！　映画に感化されたね〜、と、（笑
あと、お麩を食べて万引きして幼児を誘拐したら完璧やね〜！と・・・

細野晴臣の音楽も叙情的で素晴らしくクールで良かったな〜♬
縁側で花火が見えないのに家族が音のする方向に集まるシーンも昭和で良かった！
昔、沢山の鯉が泳いでいた池があった庭には見えないが・・・（笑
年金の搾取、幼児虐待、万引き、誘拐拉致監禁、貧困、不登校、風俗嬢、死体遺棄。
恒常的にニュースで取り上げられるネタを全部乗せ的に演出しきった秀逸な作品。
もう一回、映画館で観ようかなぁ？