2017/02/14

A strong wind blows


 20170211 sat 暴風と五里霧中の竜ヶ岳

当初の計画では大峰のシェイクスピアの氷瀑へ入山する予定だった。
大普賢直下の氷瀑は陽が差せば輝くブルーアイスを堪能できるのだが・・・
今季最大の寒波襲来の大雪でシェイクスピアまで辿り着けない可能性が出てきた。

急遽、入山前日に予定を変更。臨機応変に考えるのは嫌いではない。
暴風や大雪での途中撤退も考慮し複数名が知識のある山に入山先を絞った。
あれこれ候補を出し合って無難な落とし所が竜ヶ岳となった。

エノちゃん好人ちゃん涼ちゃん、NAさんにKUMIちょと僕の6名での入山。
樹氷を身にまとった白い羊が優しく迎えてくれるのか?
それとも傍若無人な厳冬期の暴風雪が雪山の恐怖を教えてくれるのか?



午前9時に宇賀渓の駐車場をスタートする。
閑散とした駐車場には10台も車は止まっていなかった。
朝から吹雪いている・・・着替えは屋根のある場所をお借りした。


開いている土産物屋があるはずもなく雪は深々と降り続く。
鈍色の空が鈴鹿山脈を覆い尽くしているかのようだ。


林道を遠足尾根登山口まで歩いてくると陽が差し始めた。
はやる気持ちは微塵も無い。いわゆる擬似好天だろう・・・


少し登ると九十九折の急登が始まる。
先頭はエノちゃんが良いペースで引張てくれる。
僕は最後尾で前を歩くkumiちょを煽る(笑


唯一の岩場を乗っ越す頃には青空まで広がってきた。
迂闊にも好天になるのだろうかと一瞬考えてしまった・・・


尾根に乗るまではツボ足で歩き、尾根に乗ってからはスノーシューを装着する。
この頃はまだ風も弱く全員元気な笑顔を向けてくれた。


樹林帯には先行者のトレースがしっかりある。


プチ刃渡りのような可愛い細尾根を通過する。


皆んなの後ろ姿を撮影して踏み出したら、ズルズルーとプチ滑落(笑
好人ちゃんに見事に激写されました(汗


樹林帯を抜けたら、そこそこのホワイト&ブルーが広がっているじゃないか!
だが吹き付ける風は強い。予想通りといえばそれまでだが・・・


ここからの数カットはかなりの露出オーバーなので悪しからず・・・
山登りも写真も下手糞な奴は嫌いだよ・・・


単独行の男性が追いついてきた。そして先行していった。
前には複数名のパーティーがいる。


この日はkumiちょのペースが上がらない。
履き慣れているはずの冬用の登山靴で靴ずれをやってしまったようだ・・・


好人ちゃんが撮ってくれたまともな一枚。
いなべ市から四日市市にかけての風景。
この時は輝く伊勢湾が印象的だった。


後で聞いた話だが病み上がり(腰痛)の好人ちゃんは、
再発しそうな違和感がすでに出てきていたようだ・・・


風が強い。
雪煙が舞い上がり画像にフィルターを掛けてくれる(笑


駐車場を出発してから3時間も経過していた。
時計の針は12時を回った。決断の時は近い。


進むのか?退くのか?時間的にジャッジしなければいけない。
好人ちゃんが潔く勇気ある撤退を告げてくれた。
やはり腰の状態が思わしく無いようだ。
靴ずれで踵の痛いkumiちょも好人ちゃんと下山をチョイスした。


雪煙が何度も舞い上がり、いわゆる風ボー!ボー!状態の尾根。
誰かがキャプテンシーを発揮して「今の状況では下山が適切!」と、
訴えれば皆が了承したかもしれない(マジで・・・


先行していた複数のパーティーも状況判断から撤退し下山するという。
これでほとんど先行者がいなくなったことになる。


竜ヶ岳のピークは雲の中だ。
先ほどまでの青空は消え深い濃度の暗雲が辺りを包もうとしている。


僕たちのパーティーの前には単独行の男性だけしかいないようだ。
彼が一人でラッセルしてトレースを付けてくれている。

それを見ていた僕は変なドMスイッチが点火したようだ(笑
4人の最後尾から先頭のエノちゃんをオーバーテイクして、
ガシガシ!と、トレースを付け始めたのであった♫


NAさんにしても涼ちゃんにしても多分かなり迷惑な前進だったのだろう(笑
後で聞いた話では二人とも一刻も早く「撤退!」の、
言葉を待っていたようなのだ・・・(汗


火事場のクソ力だろうか・・・?
僕とエノちゃんは先頭交代しながらグイ!グイ!と頂を目指した。
でも、それって今思うにエゴイストな遭難予備軍ではないかと考える。


パーティーの安全を考えればこの日のサミットプッシュはNGだと思う。
結果的に事なきを得たがそれは結果論でしかない。


13時15分。体が浮きそうになる強風が叩き付ける頂上台地。
乳白の濃霧は忍び寄り、我々を閉じ込めようとしている。
ランチどころか行動食すら摂取する余裕は無かった。
霰が顔にバチバチ当たり痛い!まともに風上は向けない。


視界がどんどん狭く浅くなってきていることは全員が感じ取っている。
長居は無用だ。登頂の写真を撮れば尻尾を巻いてそそくさと下山にかかる。


ここで個人的にすでにホワイトアウトになっていた人物が一名(笑
エノちゃんのメガネが真白に曇って独り五里霧中状態だ・・・(爆


先頭を引き受けて下山開始するが、
同時刻に登頂した単独行の男性が良いペースで追いついて来た。
彼に先頭を変わったのだがすぐにルートロストしている事に気付いた。

左側に大きく雪庇の張り出した細尾根を進んでいる。
「こんな箇所は歩いていない!」 彼に説明し引き返す事にした。
五名が集まり位置関係を話し合いながらルーファイする。


「自分が何処に居るか把握できなくなった地点で遭難なのだ」
羽根田 治さんの遭難本のセンテンスが甦る・・・
遠望は全く利かない。トレースは強風で殆ど掻き消されている。
地形は把握しているつもりだが、いざとなればGPSに頼ればいい。
ホワイトアウトの恐怖が忍び寄るなか、トレースの痕跡を探しながら前進する。


単独行の男性の希望により僕達のパーティーと一緒に行動してもらった。
標高を下げるに連れて乳白のベールは濃度が薄くなってゆく。
尾根とシロヤシオの群生の位置関係は把握している。
少し安堵する気持ちが生まれた。だがその時だった。
目の前に居たエノちゃんが突然消えた・・・
尾根の雪庇を踏み抜き眼前から消えた・・・
高さもなく滑落という状態でもなかったから安心したのだが、
白一色の世界は空間と雪面の境界線も曖昧な状況だった。


涼ちゃんは片方のワカンが壊れてペースを上げられない。
早く樹林帯に逃げ込みたい衝動を抑えながら緊張の時間は続いた。


風の嘶きは去り樹林帯の明確なトレースに出会い、胸を撫で下ろす。
駐車場に戻ってきたのは午後4時を回っていた・・・
たかが低山、されど低山。学びの多い入山でした。
でも、なんだか久しぶりに「登山」をしたなぁと感じる充実感に包まれていた♫


僕らの後から山頂を目指していた入山者も無事に下山できたようだ。
好人ちゃんとkumiちょには2時間ほども待ってもらっていた。
申し訳なかったです。

さて、次回こそはシェイクスピアの氷瀑を拝めるかな?

10 件のコメント:

  1. 低山冬山・ベテラン・勝手知ったる竜ヶ岳でも、強風・ホワイトアウトとなりそうになると、リスクあるんですね。帰還が午後4時過ぎとなったとなると、撤退の決断が遅かったのかもしれませんね。私なら焦っちゃいます。ほんと日曜日行かなくてよかったです。私の日曜日の山行は、山でのリスク管理より起床遭難でしたが・・・・・。私も気をつけたいと思います(^o^)。

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  2. ten2843さん

    同じ山でも天候によって難易度は雲泥の差がでますね。
    経験値に頼り過ぎれば痛い目に合います。
    常に臆病でいること。常に観察していることが大切かと考えます。
    駐車場への帰還が午後4時はこの時期としては少しtoo muchですね。
    確かに撤退するかしないかの判断は微妙で難しいです。
    無茶をする気がなかっても、結果的に無謀な行動になる場合もあります。
    今回もあれこれ考えさせられる入山になりました(笑

    起床遭難は僕も得意分野なのでよくわかります(笑

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  3. 竜ヶ岳お疲れ様でした~
    ピックアップ&眠い中の運転、ありがとうございましたm_ _m
    竜ヶ岳のピークがまだまだ遠い時に、誰がいつ撤退を言いだすのか
    待っていましたが、ドMスイッチが入ったようで^^;
    あの時はもうピークハントなんてどうでも良い感じでしたが、
    あとあと考えるとなんとか頂上に立てて良かったと思っています。

    あの強風とトレース消え、ホワイトアウトの中でのルーファイは
    楽しかったですが、一歩間違えると危険でしたね。
    山の難易度やリスクは標高ではないということを改めて感じさせられた山行で
    良い経験をしたと思っています。
    そして、結果的には雪を堪能できて楽しかったです♪
    ※ちなみに、わかんはそろそろ買い直そうかと思っています。

    また次回のシェイクスピアも楽しみにしていますので
    よろしくお願いしますm_ _m

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  4. お疲れさんでした!
    最後までお付き合いできずに残念?この天気だとラッキー?
    どちらにしても翌日に痛みが出なかったので良かったわ。
    鈴鹿セブンの1つでもある竜ヶ岳をこの機会に達成出来なかったのが
    心残りやけどまたヒツジの時期にでも行ってみます。
    車ドロドロになったでしょ。
    次回のシェイクスピアは最後までご一緒出来たらいいな~♪

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  5. えれぇこった2号2017/02/15 20:01:00

    お疲れ様でした!!
    無事に下山出来て良かったですね!
    ホワイトアウトすると、方向がわからなくなったりするので怖いですよね!

    次は氷瀑なんですね♪
    楽しみですね!

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  6. 涼ちゃん

    先日は暴風雪の竜ヶ岳登頂お疲れ様でした〜
    僕もどこかで撤退したほうが賢明だろうなぁと考えたのですが・・・
    前方の単独行者が一人でラッセルしているのを見ていたら、
    なんだか変なドMスイッチが点火してしまいました(笑
    涼ちゃんも疲れていたのにゴメンね〜(汗

    強風、トレース無し、ホワイトアウト・・・アカン条件満載やね(滝汗
    ひょっとしたらヤバイかもって気持ち半分と
    楽し〜ぜーって気持ちが半分でした(爆
    でも、もう少し慎重になったほうが良いのかもしれないね!(反省

    ワカンは修理やなしに買い直すのね。それも物欲かな〜(笑
    次回こそはシェイクスピアの氷瀑を堪能したいよね!
    こちらこそよろしくお願いします。

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  7. 好人ちゃん

    お疲れさんでした!
    股関節や腰の具合が思ったほど悪化せずに良かったね!
    下山するまで好人ちゃんの体調の事ばかり心配してたよ〜(ウソ
    シロヤシオ満開の頃にまた竜ヶ岳は遊びに来ようよ♫
    雪道走行はめっちゃ楽しかったけど車はドロドロやったわ〜(笑
    次回こそはシェイクスピアの氷瀑を堪能したいよね!

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  8. kakaちゃん

    ありがとうございます!
    同時期の同じ山でも天候によって難易度は雲泥の差ですね・・・
    ピーカンの日は楽しいもんね〜
    次回こそはシェイクスピアの氷瀑を堪能しますよ♫
    楽しみです!

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  9. (๑˃̵ᴗ˂̵)
    文中にもコメントにもあるように低山であっても特に冬の雪が敷き詰められて自然物もほぼ埋まり地形も読み難くなってくると夏場もしくは晴天&視界良好な時とは別物やもんねぇ!
    多分ね!
    少人数、例えばクミちゃん時とは2人だけの山行なら1050辺りの小ピークで撤退してたと思うけど、グループ登山の怖いとこで..........
    人数が居た事も迷った時の選択が進むになってしまったように思うなぁ!
    無理しないようにねぇ〜^_^

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  10. totoちゃん

    いやほんまに今更やけど毎回勉強やわ!
    無雪期と積雪期は全くの別物!
    そんなことは経験上百も承知つもりでも・・・
    確かにグループ登山の罠ってあると思うわ(汗
    単独やクミコと二人やったらもっと慎重やろね(笑
    どこかで、メイビー大丈夫!って回路が働くんやろね・・・
    多少の無理はこれからもするよ!
    でも無謀な真似は絶対にしない!
    でも、その境界線は曖昧なんだよね・・・

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