2014 February
灰色猫の断想
僕は昔、猫を飼っていた。11年間ほどロシアンブルーという灰色の猫を飼っていた。
ちなみに今も懲りずに猫を飼っている。アビシニアンという茶色の猫を二匹飼っている。
ロシアンブルーより活発な生態であるアビシニアンが二匹という生活は忙しい。
天井までジャンプするのではと不安に思った時期もあったほどだ。
躍動感溢れるアビシニアンは力強いがロシアンブルーのしなやかな品格は感じない。
まあ猫は猫だ。良いとか悪いとかは考えたこともない。誰もが知る猫の生態が好きなのだ。
若き茶色い猫二匹はキッチンから冷蔵庫の上までジャンプする。
そして冷蔵庫の上からジャンプして飛び降りる。
廊下の向こう側。磨りガラスの扉からも茶色い影が上下に飛ぶ姿をよく目にする。
だが時折、磨りガラスの向こう側で躍動する猫の色が灰色に見えたりもする。
茶色でも灰色でも驚きはないのだがより多く灰色を見たい気がする。
その昔、灰色の猫を飼っていた時、僕と灰色の猫だけの時間と会話があった。
ソファやキッチンやデスクやベッドで灰色の猫と会話を楽しんだ。
灰色の猫は優しい小さな声でささやき僕をいつも癒してくれた。
灰色の猫は喜怒哀楽の激しい僕の性格を把握しているかのように反応してくれた。
猫にしておくのはもったいないような忠犬のような猫だった。
灰色の猫は晩年、病魔に冒された。みるみるうちに衰弱していった。
キッチンやテーブルにジャンプする等、果敢なき夢となった。
灰色の猫の体力は日に日に落ちていった。僕と妻が寝るベッドにもジャンプ出来なくなっていた。
灰色の猫がベッドへジャンプしようとして、まったくもって足が動いていなかった姿は辛かった。
その日から僕と灰色の猫の新しいコミュンケーションが始まった。
ベッドの右側に寝る僕は深夜であったり明方であったりルーティーンでベッドから右腕を出すようになった。
ベッドまでジャンプ出来なくなった灰色の猫は僕の右の拳に頬をぐりぐり擦り付け挨拶してくれた。
でも、そんな素敵なコミュニケーションは数週間しか続かなかった。
そして、年が明け今では茶色い猫二匹が明方に僕達のベッドにもぐり込み寝ている。
でも、僕は今でも時折、明方にベッドから右腕を出している。
右手の人差し指と中指の第二関節をぐっと曲げて突き出している。
その第二関節は灰色猫の頬に触れたいのだ。
灰色猫はたぶん僕の右手の第二関節に触れてくれていると思うんだ。
僕が分からないだけで・・・・・
今でもいつでも灰色猫に会いたい。ギュッと抱きしめたい。
叶わぬ事は百も承知。でも茶色猫との暮らしの中でも灰色猫への想いは消えない。
今日、動物霊園に行き雪のちらつく空の下で灰色猫にたくさん語りかけて来た。
ありがとう。ありがとう。ありがとう。