2012/09/13

Lost in the Mountains


20120913 thu 秋の夜長に「遭難」を考察する

登攀だろうがハイキングだろうが入山すれば誰だって遭難しない補償は何処にも無い。
そう、いつだって山岳遭難は密かに待ち構えているし君の背後からだってやって来る。
山の先達は言う「山で死んではいけない」と。この当たり前の事をどれだけ理解しているのか。

君がずっとチェックしていたあの山ブロガーも雪崩で帰らぬ人になったじゃないか。
そして周りを見渡してごらん。山で命を失った友人もしくは知人がいる事実。
誤解の無いように言っておくが重たい話を書こうとしているつもりは微塵も無い。

秋の夜長に遭難についてドキュメンタリーをドキドキしながら読んでみてはという話。
僕と同世代のライターである羽根田 治氏の新刊が久しぶりに出た。もちろん遭難本。
「気象」「道迷い」「滑落」の羽根田遭難三部作から四年振りのドキュメントシリーズ。

 

僕は羽根田氏の文章が好きだ。それは世代が近いとかではなく彼の感性だと思う。羽根田氏は小説家ではない。少なくとも僕はそう捉えている。そしてとても優秀なフリーライターだと認識している。
小説家のように裏を考えさせようとする行為や、行間を読ませようとする事を排除した真摯な文体にとても好感や共感を覚える。事実を分かりやすく誰もが理解しうるであろう文体を用いて説明する。それはライターの基本中の基本をハイエンドで執筆出来る物書きだという事。


「ドキュメント気象遭難」が2003年。「ドキュメント道迷い遭難」が2006年。「ドキュメント滑落遭難」が2008年。発行所はもちろんご存知「山と渓谷社」。約10年で遭難四部作になった。2000年の「生還ー山岳遭難からの救出」は全て生還の話なので割愛。そして十数年前は遭難者への取材がまだ寛容だったようだが、現在は遭難事故に関する取材は難しいというよりも当事者へのアプローチ自体が不可能に近いらしい。
「気象」「道迷い」「滑落」の中には「単独行遭難」も事例としてかなり多く含まれている。そして今回どうして「単独行」に的を絞って書かれたのかは勿論言いません。
あえて的を外しながら「ドキュメント単独行遭難」について少し触れるとすると、過去の三部作同様やはり歩いた事のある山が登場している事。例えば徳本峠や奥穂高岳、尾瀬や白山など皆が普通に経験している山で多種多様な単独行遭難がある事。その中で奥穂高岳とはジャンダルムでの単独行遭難の事例である。事故の日は2011年10月4日の事。僕がdaiちゃんやケンケンとジャンダルムを縦走した一週間ほど先の事故の話である。事故現場は核心部(ジャンダルム)を通過したコブの頭を越えて天狗のコルへ下ってゆく最中に単独行者が滑落した遭難。勿論その後の内容は書きません。ジャンダルムを縦走したことが無ければなんのこっちゃで終わるかもしれないが、ケーススタディとしての教訓はちりばめられている。


あとがきの前に今回は「単独行の考察」として25頁ほど解説されている。事実に基づく事例を客観的に紐解き統計学も引用しながらのリスクマネジメントは素直に役立つ考察である。
「ドキュメント気象遭難」では谷川岳の雪崩に始まり剣岳での二つ玉低気圧の遭難事例から未だに記憶に新しいトムラウシ山の遭難を驚くほど端的に分かりやすく解説している。
「ドキュメント道迷い遭難」では低山での過信からの数日に及ぶ道迷い遭難。幻聴や幻覚は簡単に訪れる事。やってはいけない沢を下り帰らぬ人となった事例。一月の常念岳で道迷い遭難の挙げ句に凍傷になり指の切断の話などゾクゾク感は満載。
「ドキュメント滑落遭難」では皆さんご存知の北アルプスの北穂高岳や西穂高岳から南アルプスの北岳までメジャーな山岳での滑落遭難がゴロンゴロンと満載。ウジ虫が身体に湧いた話などはかなりヤバい。それに関西人には身近な大峰の釈迦岳からの下山時での滑落遭難はリアルすぎてハラハラドキドキ。
山を始めてまだ数年のあなたには是非読んでほしいと思う。山を歩き続けて十年二十年のベテランのあなただって山を案内するビギナー達の為にも違う視点を見つけられるかもしれません。


もちろんkumi長にも順番に読んでもらったが注意点がある。それは読書によるプチPTSDやプチトラウマもありえると言う事(笑) 僕より遥かにIQの高いkumi長の性格はウルトラビビリなくせに負けず嫌いで生真面目な性格。こういうタイプは即座にストーリーを把握し、学習すべき探究心から登場人物に自身を投影しオートマティックに仮想現実を作り易いのかもしれない。はっきり言おう。そういうタイプは、がっぷり四つで読んではいけない(笑


何度目の登山ブームなのか知らないが、日本のGDPとは裏腹に山ガールの勢いは止まらない。そして女子が動けば男子も動く。悲しいかな未来永劫普遍のパターン。その昔、僕が山を始めた頃は休日の北アルプスの山小屋は満員だった。寝返りをうてば隣の知らないオヤジとフレンチキスしそうな勢いの間隔だった。最近までそういう状況だと思っていたが少し変化が現れている。それはリスクの低い小屋泊よりテント泊登山者が急増している事。昨秋の涸沢テン場の記録的な混雑ぶりなど記憶に新しい。テントメーカの納期遅れなど嬉しい悲鳴まで聞こえてくる。またヤラレタよ。ULブームの時と同じじゃないか。メーカーとメディア主導でショップでモノが売れるためにブームは作られてゆく。
残念ながら右肩上がりのムーブメントと比例して多種多様な形態で「遭難」はさらに増えてゆくのだろう。山岳のリスクマネージメントにおいて場数を踏む事が最善なのだと考えるが、その場数の毎回にも遭難のリスクはついて回る。その中でオウンリスクを少しでも軽減出来る知識は邪魔になならない。だから秋の夜長は策を練るには最適な季節でしょ♪


2012年9月12日。平年より18日早く初冠雪だって♪
今年もそろそろ冬期・御殿場マイノリティー開山祭も近いね♪
今期こそは厳冬期3776mサミットプッシュせなあきまへん♪

6 件のコメント:

  1. cut-chang、起床遭難の本書いてよ〜。
    ご自身の豊富な経験をもとに(笑)
    ボクの経験も吐き出すよ(笑)
    …てか、経験もなにも、覚えてないorz
    …しかも、鯨飲はある一点に収束するよねorz

    今季こそ、富士さまぞ!
    スクワット♥

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  2. かっちゃん、久しぶりに覗きました(^^)/~~~
    体調は大丈夫なの!?
    まあ、連絡が無い!って事は大丈夫だと思ってるけど!
    最近、僕も全く山から遠ざかってるので最近の山事情が浦島太郎状態かもしれない(+_+)
    まだ、山ガールなるものが流行ってるんだね・・・・・
    山に遭難は付きものだからね・・・・・入山する各々がいかに窮地を回避出来る知識と技術があるか!?
    昔、話した事があると思うけど『困難』と『危険』の境界線を解らずして、それ!あそこのピークだ!あそこのルートだ!と付き進むタイプの人が一番遭難確立が高いよね。
    天気予報なんて山ではほとんど当てにならない!自分が居てるその山でしか気象の変化は感じ取れない。
    道に迷う・・・・・これは一般的によくあるね(-.-)
    読図力・コンパスが無くても方角を読める・迷った時にどうするのが一番最良の方法か!?
    等々・・・・・その他にも本には書いてない事で山で遭難してしまった時の脱出法って結構あるよね(^^ゞ
    無事に下山してなんぼ!だから、全ての入山者が心得てくれればいいんだけどね!
    僕も、もう少し仕事落ち着いたら、山へ復活するので宜しくですm(__)m

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  3. dai-chang

    起床遭難本いいね♪共同執筆する?
    それはね、鉛筆をね、一緒に握って二人で書くんだよ♥
    でも内容的には九割方は泥酔本になるんだろうね(笑

    で、連休だぜぇ、仕事だぜぇ、東北出張だぜ〜(泣

    冬富士いくぜぇ!

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  4. bp-やっちゃん

    お久しぶりやんか!
    いきなりの長文コメントありがとうございます☆
    最近の山事情は、そないに変わってないと思うよ。
    仕事が忙しいのは、よく知ってるけど待ってるで〜。
    早よ戻っておいでよ〜♪♪♪

    たしかに冒険と無謀は表裏一体・・・。
    越えてはいけない一線を嗅ぎ分けることは必須やね。
    また天気図の書き方教えてくださいな。

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  5. 本の紹介どうもありがとうございます!出張がんば☆
    私もさっそく最新刊と起床遭難の本を図書館で借りようって思ったら、
    どれも予約が複数入ってて、すぐには読めなさそうです(T_T)
    最新刊に至っては6件も!!
    cloud nine の愛読者、我が街にも大勢いるようです。
    予約したので年内に読めるといいな♪
    P.S. バウルーついに購入しました!昨日届きました☆
    試作レポはかけなさそうなので取り急ぎご報告まで。

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  6. きょこちゃん

    なんとか無事に出張からもどりました。
    応援ありがとうございました〜☆

    例のブツは来週発送しますからね♪
    楽しみにしといてちょんまげ(笑

    >P.S. バウルーついに購入しました!昨日届きました☆
    おめでとう!これで君も立派なバウルーマルチ信者なのだよ。
    そしてブログを通じて子を作り孫を作らせネットワークを広げるように!(笑
    近々、試作レポ楽しみにしてますよ〜♪

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